看護師さんたちとの丁寧な問診が終わり、
しばらくして院長先生の診察になりました。
先生は、ゆっくりとした口調でこう言いました。
「あのねー、高齢だよねー。病院は変わらないほうがいいんだけどなぁ…」
その言葉に、私は少し身構えました。
でも先生は、私や父の話、看護師さんが記録してくれたパソコン画面を見ながら、
「そっか、そっか」と、何度も頷いてくれました。
そして、こう言ってくださったのです。
「じゃあね、そういうことならね──僕が診るよ」
その一言に、私は思わず胸が熱くなりました。
父も、少し驚いたような顔をしていました。
先生は続けて、こう話してくれました。
「今飲んでる薬も、減らしていくよ?
高齢者なのに薬をたくさん飲んだって、よくないからね。
本当に必要なものにしていくために、検査して、しっかり見極めていこうね」
その言葉は、医学的な説明以上に、
父の“人としての尊厳”に寄り添ってくれるものでした。
この病院にしてから、
毎回、看護師さんとのやりとり、先生とのやりとりに、
父は少しずつ元気を取り戻してきました。
表情が柔らかくなり、
診察の日を「面倒」ではなく「安心」に感じているようでした。
病院を変えることは、勇気がいることでした。
でも今、父の心が少しずつほどけていくのを見て、
「変えてよかった」と、心から思っています。

コメント